変わりゆく「現地採用」 〜キャリア化・スキル化の未来

6月 9, 20193

 

 現地採用者とその環境が、ここ数年大きく変わっています。特にアジア圏など日系法人の進出がめざましい地域で、現地採用者のニーズは年々高まっており、採用される側の「高待遇化」「高スキル化」が指摘されています。一昔前までは「現地採用はキャリアになりにくい」と言われていましたが、現在は、現地採用の就労経験がさまざまなキャリアパスを拓くことも常識となりつつあります。

  現在、海外志向の若者の中では、「ワーク・ライフ・バランス」の実現と、将来性を見出した特定の国でのユニークなキャリアビルドを求めて、現地採用を積極的に志願する人が増えています。タイを一例に挙げましょう。2018年12月にタイの日本語情報誌「DACO」が現地採用者260名以上を対象に行ったアンケートによれば、現地採用者の半数が日本ですでに就職先を決めてタイに渡航しています。また、24万~69万円の手取りを得て働く者が55%おり、ビジネスレベル以上のタイ語と英語ができるトリリンガルが31%以上いることから、現地採用者の高モチベーション・高収入・高スキルの傾向が浮かび上がります。また、日本よりタイが暮らしやすいと答えた人は85.1%、日本に本帰国する予定が「ない」「わからない」「あるが時期は未定」を合わせると93.8%にのぼり、生活への満足度が高いこともうかがえます(『DACO』現採白書リアル編・ミライ編、第493−494号)。

 渦中にいる海外在住者は、この変化をどのように肌で感じているでしょうか?  当イベントでは、「現地採用」にかかわる3名の登壇者をお招きして、「現地採用」の現状と未来の展望について語っていただきます。

  まずは「日本人現地採用者は駐在員と現地スタッフの重要な潤滑油!」と語るメキシコ在住の山下陽子さん。海外出向、日本Iターン転職などを経ながら、現地採用歴7年以上、現在は駐在員妻でもあるという多彩なキャリアをお持ちです。そしてインド在住、現地採用者と日系法人との橋渡しをする人材紹介会社勤務の森土卓磨さん。アジアでの現地採用を目指す若者へのメッセージのみならず、採用する側の日系企業が心がけることは何かなど、複眼的な視点からアドバイスをいただきます。最後に、メキシコにて多くの現地採用者に「メキシコの父」と慕われる、遠藤博さん。駐在歴22年以上の駐在員の視点から、部下であり同僚であり友人でもある現地採用者について、思いを語っていただきます。

 昔ながらの「現地採用」のイメージはもう、古い。企業の拠点数が世界第3位のインドと、前年比の企業進出率(拠点増加率)がカンボジアに次いで世界2位のメキシコ。両国からスピーカーが集まるのは初めての試みです。現地採用者もそうでない方も、イベントへのご参加を歓迎します。

 

プログラム
0:00  はじめに​​
0:05  クロストーク
1:05  交流会 ドリンクとお菓子のご用意はできませんが、おもてなし気分で開きます。
1:45  終了。
※時間は日本時間です。ヨーロッパやアメリカなどの多くの地域では6月8日土曜日になります。お間違えのないようにお気をつけください。
※クロストークは、登壇者のみが画像をオンにし、レコーディングさせていただきます(参加者の顔は写りません)。
※交流会はオフレコになります。

 

登壇者​
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山下陽子(やました ようこ

転職経験は人材コンサルタント以上!?

アメリカ留学中、必須科目ではなかったスペイン語の授業で挫折し、20代後半で再チャレンジしたスペイン語学習をきっかけに日墨グローバルパートナーシップ研修計画でメキシコへ留学。
その後、現地採用、日本でIターン転職、海外出向などを経て、婚活のつもりで始めた転職活動で再びメキシコへUターン。良いことも辛いことも日本、海外で体験し、現在は駐在員の妻で出張も伴う就業を継続中という希少な条件を得て40代に突入。

 

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森土卓磨(もりど たくま)

1987年東京都生まれ。大阪外国語大学地域文化学科(現大阪大学外国語学部)卒業。大学ではインドの公用語の一つであるウルドゥー語を専攻。専門商社を経て、日系人材紹介会社の海外法人に入社。

2014年に上海拠点にて新規開拓業務に従事。2015年から同社インド拠点に異動、企業や転職希望者のコンサルティングに従事、2016年1月より同社ジャパンデスクの責任者を務める。

 

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遠藤博(えんどう ひろし)

65歳。現在はメキシコの太平洋側港街にて日系商社派遣駐在員として勤務。

大学でスペイン語を学び卒業後電機メーカーで中南米(パナマ・アルゼンチン・メキシコ)、ロシアでの駐在歴計18年を含む家電製品の海外営業に携わり、定年退職後はフリーのスペイン語通訳案内士を経て外食チェーン企業のメキシコ現法で3年、その後現職で1年経過。メキシコでの勤務は通算9年。

 

司会進行
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​秋田まき(あきた まき)

アメリカテキサス州在住。海外生活・国際恋愛専門カウンセラー、「海外こころのヘルプデスク24時」発起人。

京都大学教育学研究科博士課程修了・博士号(教育学)。駐在員家庭に育ち、留学・国際結婚を通じてオランダ・フランス・メキシコで暮らす。メキシコシティ日本人学校元スクールカウンセラー。海外在住者へオンライン心理カウンセリングを行う傍ら、2018年6月に非営利相談機関「海外こころのヘルプデスク24時」を立ち上げる。

海外生活・国際恋愛専門カウンセリング
https://www.kaigaisoudan.com

 

イベントについて

開催日  日本時間 2019年6月9日(日)​ 0:00am-​1:45am(終了しました)
場所   Zoom上のオンライン会議室​​
定員   50名
参加費  無料
対象   海外日系企業の現在を知りたい方。海外日系企業勤務を目指す方。
主催   非営利相談機関「海外 こころのヘルプデスク24時」
ご注意
・レコーディングは公開されることがあります(交流会を除く)。
・お申し込みいただいた方に、当日のミーティングURLをお教えします。
・Zoomが不安な方のために、当日10分前から会議室をオープンにします。
・開始後はZoomの操作についてのお問い合わせにはお答えできません。
・途中退出は自由です。
・プログラムは予告なく変更になることがあります。

 


イベントレポート(動画あり)

「変わりゆく『現地採用』〜キャリア化・スキル化の未来」

​テキスト:中井茉由子

 2019年6月9日、オンライン会議室(Zoom)にて『変わりゆく「現地採用」​〜キャリア化・スキル化の未来』というテーマでイベントが開催されました。

私自身、周りで繰り返される「現地採用」「駐在員」「ローカルスタッフ」などの言葉に、違和感を覚えていました。80年代、90年代に出来上がったイメージが未だに払拭されずに、現状とのギャップが広がりつつあるように感じます。

今回のオンラインイベントでは​、現地採用や日本でIターン転職、海外出向などを経て、現在もメキシコで働く山下陽子さん、上海での事業開拓を経て、2015年からはインドで働く森土卓磨さん、中南米やロシアなどで20年以上の海外経験を積まれて、今もメキシコで駐在員として働く遠藤博さんをお招きし、現地採用者の「今」やキャリアアップ、今後の展望などについてお伺いしました。

「現地採用ではキャリアアップは望めない」「駐在員との格差が大きい」などネガティブなイメージを持たれることが多くありましたが、バイリンガル以上のマルチリンガルが増えており、キャリアパスが広がりつつあります。ビジネスの多様化にともない、現地採用者の業務内容も変化していますし、現地での採用活動を超えて、日本でリクルーティングを行っている例も多くなってきました。

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 現地採用者の需要が増加する一方で、海外でのキャリアが日本でのキャリアに繋がるのか、帰国時や日本での仕事に対する不安を抱えていたり、保険や医療などの福祉的な部分での問題は未だに大きな変化を遂げていないのかもしれません。現地採用としての経験をその後のキャリアアップに繋げられるかは、いくらでも自分で切り開くことができる。偏見やレッテルがないとは言い切れないけれど、「現地採用だから」と一括りにできるものではないようです。
 駐在員とローカルスタッフの間に立つ「現地採用者」には、いかに現地のスタッフに寄り添っていけるかという点と、日本人としてのバリューを活かすハイブリッドな存在であることが求められるようになってきています。
 最後に、海外での経験を通してキャリアを積んでいらっしゃる御三方から、海外就職を目指す方達への熱いメッセージをいただき、クロストークは締めくくられました。
 森土さん 「一人じゃない!」
海外で働く人は沢山いるし、多くの人が多くのものを得られるようなwin-winな関係を作りたいと思っている。悩み過ぎずに!
 山下さん 「社内外でメンターを持つ」
友人以上に、真摯に相談に乗ってくれる信頼できる人を探してほしい。
 遠藤さん 「求めよ。されば与えられる」
リスクも自覚する必要があるけれど、数年先の未来をイメージしてみることを繰り返してみてほしい。見ていてくれる人やサポートしてくれる人は必ずいて、一人じゃない!
続いて開かれた交流会では、トークでは出なかったヨーロッパやアメリカの情報や、現地採用者が転職を考える理由、現地で採用されるために語学以外で必要な要素など、より突っ込んだ質疑が飛び交いました。
​ トーク部分の動画を公開していますので、ぜひ海外で働く3名の登壇者の生の声をお聞きください。

 

3 comments

  • 【参加者さんの声】

    6月 10, 2019 at 12:00 am

    まきさんがおっしゃっていたように、
    「駐在員」「現地採用」とか、ラベリングされることに
    胸がざわざわする感じがしていて、
    私が感じていたのはこの違和感だったのかーー!!と思いました。
    もちろん皆成果を求められるけれど、有期の駐在員の中には
    ローカルとへの歩み寄りをまったく考えていなかったり
    やりっぱなし感を感じることが多くあったんですよね。

    どこで採用されるかという場所の問題を超えて、
    働く姿勢について考えた時間でした。

    Reply

  • 【参加者さんの声】

    6月 10, 2019 at 12:00 am

    この度は参加させて頂きありがとうございました。

    現地採用という雇用の形は、私自身がこちらにきた2017年には、まだ日本の当時の同僚からは珍しがられていましたが、今回のテーマに取り上げられているほど増えてきているのだと実感しましたし、同じように現地採用で働いている経験のある方がいることにも少し驚きました。

    日本の中では、まだあまり注目されない雇用のカテゴリーかと思いますが、今後色々な働き方が増えてくるにあたって、選択肢の一つとして確立する日もそう遠くないかもしれないですね。

    私も、日本にいたときに今回のようなセッションに参加できたらよかったのにな!と思いました。

    Reply

  • 【参加者さんの声】

    6月 10, 2019 at 12:00 am

    自分のキャリアについて考えてた時に、すごくいいタイミングで参加させていただきました。
    皆さん異なったストーリーを持っていて海外生活するに至ってるし、参考になるし刺激も受けました。

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